2013.02.21
入社前研修~強制なら立派な労働時間

とうとう花粉症モードに突入した、社労士のトモノです。
今回はしずまっちとのコラボ企画第三弾、「入社前研修」です。
会社が内定を出した後、入社前研修を実施する場合もあると思います。
果たして入社前研修って、給料を払わなくてはいけないのでしょうか?
もし支払う場合は、一体いくら払えばよいのでしょうか?
そこで、まず入社前研修が「労働時間」に該当するか否かがポイントになります。
労働時間に該当すれば賃金の支払が生じるからです。
では労働時間とは何かですが、簡単に言えば「会社の指揮命令下にある時間」を言います。会社に拘束されている時間のことですね。
ではそれらを踏まえて、入社前研修に話を戻しますね。
入社前研修が労働時間とみなされるのは「強制参加」の場合です。その場合は賃金の支払義務が生じます
逆に「自由参加」であれば労働時間とはみなされず、賃金の支払義務は生じません。
ただ実際は、内定者全員を揃えた上で研修を受けさせるのが普通でしょうから、一般的には強制参加ということになるでしょうね。自由参加ですと不参加者に対して、後々フォローしなくてはいけないですし。
ではその場合、いくらくらい払えばよいのでしょうか?
四大新卒ですと、初任給は20万円くらいが相場ですよね。ではこの金額を基に払わなくてはいけないのでしょうか?時間給にして1200円くらいです。
実はこの初任給は、あくまでも入社以後の約束事なんです。
ですから、入社前研修は自由に金額を決められます。ただし「最低賃金」だけは注意して下さい。
ちなみに本日現在、静岡県の最賃は735円です。(ただし一定の業種は異なります。コチラを参考に)
また、実際は「研修手当」という名目で払われることが多いのではないでしょうか。
「給料」とか「時間給」とすると、「労働」という意識が色濃くなりますから。あまり入社前にはふさわしくない気がします。
ということで、今回は入社前研修についてでした。
ではまた来週^^
スポンサーサイト
2013.02.14
内定辞退~常識が問われる解約行為

漫画の締切に追われ、漫画家の気持ちが少しだけ分かってきた社労士のトモノです(笑)
さて今回は、しずまっちとのコラボ企画第二弾です^^
テーマはズバリ「内定辞退」。
内定辞退って自由にできるのでしょうか?それに対して企業はペナルティーを課すことができるのでしょうか?
まずはそのあたりを法的な観点から解説します。
ではそもそも内定ってなんでしょうか?
内定とは、ズバリ「労働契約の締結」のことなんです。
但し就活生であれば在学中に内定を出すことになるため、この契約には「卒業後に雇用しますよ」という意味が含まれています。
また他方で「その間、内定を取り消しすることもありますよ」という意味も含まれてもいます。(「内定取り消し」については後日お伝えします)
いずれにせよ、内定辞退とは労働契約を解約する行為なんですね。
ではそれらを踏まえ、果たして就活生や求職者(以下「就活生等」)から自由に内定辞退(労働契約の解約)ができるのでしょうか?
結論から言うと、2週間の予告期間を置けば可能なんです。逆に言えば、内定辞退を通知してから2週間後に労働契約は解約します。
ちなみにこれは民法の内容になります。在職中の労働者が自己都合で退職する場合も同じです。
では企業として、内定辞退者に対して何らかのペナルティーを課すことはできるのでしょうか。
例えば損害賠償の請求。
でもそこまでの違法性があるか微妙ですし、実際の損害額を算定することが難しいですよね。これはあきらめましょう。もちろん、法的に入社を強制させることもできません。
「じゃあ、企業としては泣き寝入りするしかないのっ!?」
そんな声が採用担当者から聞こえてきそうですね…
さて以上が「法的」なお話。
今回は(当ブログの主旨から少し外れますが)内定辞退に対する「常識」についても簡単に触れておきますね。
まず就活生等のみなさん!
やむを得ず内定を断らなくてはいけないこともあるでしょう。
その場合は、とにかく早めに・誠実に企業へ伝えること。方法としては、文書や電話、直接話す等が考えられます。
いずれにせよ、早めに・誠実に、が鉄則です。
次に企業のみなさん!
内定辞退者に対して「採用計画が狂った。どうしてくれる!?」などとパワハラめいた発言はNGです。
会社の資質が問われます。
これからの社会人生活で、お互いにいつかどこかで出会うことがあるかもしれませんしね。
蛇足ですが、私が企業で新卒採用担当をしていた頃、内定辞退はあまりなかったんです。
なぜかと言うと、とにかく急いで内定を出すことよりも、じっくり時間をかけて採用活動したからです。要するに、就活生に「考える時間を与えること」が重要なんです。
但し会社説明会では、何の連絡もないドタキャンはありましたね(笑)
1度につき20~30人規模でやっていたのですが、必ず数名いました。何となく学校も偏っていたような…
いずれにせよ、社会人として常識ある態度で対応しましょう。
ではまた来週!
2013.01.31
面接~聞いちゃいけないNGな質問

この度、当四コマブログが「しずまっち」の得々情報としてシェアされることになった、社労士のトモノです。
しずまっちとは、静岡市の中小企業と就活生を結びつける事業・サイトです。
ということで、今回から「採用」に関するテーマを5回にわたって解説していきます。企業・学生両者に是非知っておいてもらいたい内容を厳選していきますので、お楽しみに!
まず記念すべき第1回目のテーマは「面接~聞いちゃいけないNGな質問」です。
面接では、聞いていいこと・悪いことをしっかり区別して質問していますか?
何でも聞いていいってものではありません。
では最初に、厚生労働省が発表している「公正な採用選考について」のうち、重要な部分を確認してみましょう。
それによると、次の事項を面接で尋ねるのは問題ありとしています。
本人に責任のない事項
・本籍
・出生地に関すること
・家族に関すること
(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産、家族の仕事の有無・職種・勤務先・家族構成)
・住宅状況に関すること
(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合・学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
では次に職業安定法(の指針)を確認していきましょう。
当指針では、募集を行う際、原則として収集してはならない個人情報を以下のように規定しています。
・人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地そのほか、社会的差別の原因となるおそれのある事項
・思想および信条
・労働組合への加入状況
どうですか?
「普段聞いちゃってるよ~」って人、いませんか。気を付けましょうね。
(そんな私も前職では一般企業で、新卒や中途採用における面接官を担当していましたが、着任当初は何も知らずに平気で聞いていたこともありました…;^^)
面接官は、就活生や求職者からすれば最初に出会う会社の「顔」です。
節度ある質問をしましょう。面接官の質問次第で会社の資質が問われますよ。
ではまた!
2013.01.20
業務労災

最近シェアオフィスに引っ越し、心機一転の社労士のトモノです。
さて今回は「業務労災」(以下「労災」)です。
業務中に労働者に災害が起こった場合、労災になるとかならないとか、しばしば議論のタネになりますが、ではそもそも労災とはどんな場合に認められるのでしょうか。
それは次の2つの要件を満たした場合です。
①業務遂行性
災害発生時に、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にあること
②業務起因性
その災害が、業務に起因して発生したものであること
ではこのうち業務遂行性について、3つのパターン別に具体的にみていきます。
①事業主の支配下・管理下にあり、業務に従事している場合
これは、所定労働時間内や残業時間内に事業場内で業務に従事している場合が該当します。
ちなみに生理的行為や突発的・反射的行為(トイレに行く、強風で飛ばされた帽子を拾う場合等)は業務上と認められます。
但し次の場合は、業務上(労災)とは認められません。
・労働者が就業中に私的行為や恣意的行為により、災害を発生させた場合
・労働者が故意に災害を発生させた場合
・天災地変による被災(但し災害を被りやすい業務の事情があるときは例外的に認められます。東日本大震災はこの例外でした)など
②事業主の支配下・管理下にあるが、業務に従事していない場合
これは、休憩時間や就業時間前後に事業場施設内にいる場合が該当するのですが、私的行為となるため業務上(労災)とは認められません。
但し、事業場の施設や設備、管理状況などが原因で災害が発生した場合は、業務上と認められます。
③事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
これは出張や社外業務が該当し、積極的な私的行為などがなければ業務上と認められます。
これらの業務遂行性と、前述の業務起因性の2つの要件が揃ってはじめて労災と認められるのです。
但し「職業病」など、業務遂行性が認められにくい場合であっても、業務起因性が認められれば労災と認定されるケースもあります。
あと蛇足ですが、よく「労災(保険)を使うと労災保険料率が上がるから使いたくない」という経営者がいらっしゃいますが、実はこれ、労働者が20人未満の会社は全く気にしなくていい話なんです。
これは「メリット制」といって、次の両方の要件を満たす会社だけが関係してくるものなんです。
①連続する3保険年度中の最後の保険年度の3月31日において、労災保険の保険関係成立後3年以上経過している場合
②連続する3保険年度中の各保険年度で次のいずれかに該当する場合
ア 100人以上の労働者を使用
イ 20人以上100人未満の労働者を使用する事業であって、災害度係数が0.4以上
ウ 一括有期事業にあっては、連続する3保険年度中の各保険年度において、確定保険料の額が100万円以上
繰り返しますが、労働者が20人未満であれば、いくら労災を使おうが労災保険料率は上がりません!
覚えておいてくださいね。もちろん、労災が起こらいことが1番です^^
本年もよろしくお願いします。←遅っ!
2012.12.27
身元保証契約

先日クリスマスパーティでゴスペルを歌った、社労士のトモノです。
さて、今年最後のテーマは「身元保証契約」です。
身元保証契約とは、身元保証人が採用された従業員が故意または過失により使用者(企業)に与えた損害を賠償する契約のことで、通常は書面で締結します。(締結する義務はないですが)
詳細は「身元保証法」という法律に定められています。では順にポイントを解説します。
・身元保証人の資格要件
法律上、特に定めはありません。企業が任意に定めるケースがほとんどです。
一般的には「保証能力のある人」(経済的に独立している成人)とすることが多いでしょう。
更に加えて「血縁関係」や「居住関係」(企業と同一地域に居住)を要件とすることもあります。
人数も自由です。1人、若しくは2人とする場合が多いでしょう。
また「実印証明」を提出させるケースもあります。
・保証期間
保証期間を設ける場合は最長で5年、設けない場合は自動的に3年となります。
自動更新は認めらませんので、期間満了したら改めて契約を結ぶことになります。
自動更新を認めないのは、保証人がうっかりして期間が満了したことを知らないでいることがあるからです。
実務では更新しないことがほとんどです。なぜなら、ある程度経てば、企業と従業員の間には一定の信頼関係が構築されていると考えるからです。
・保証責任
もし従業員が企業に損害を発生させた場合でも、保証人の損害賠償責任を過重にしないため次の点が勘案されます。
①使用者の監督責任上の過失の有無
②保証人が保証を引き受けた理由
③保証人になったときの従業員に与えた注意の程度
④保証時以後における従業員の任務や身上の変化
特に④についてですが、使用者は被用者が「不適任・不誠実な行動があり保証人に迷惑をかける恐れがある場合」とか、「配転などで任務・任地を変更し、保証人の責任を過重にしたり監督を困難にする恐れがある場合」は、保証人に通知しなければならない義務があります。
そして通知を受けた場合、保証人は将来に向かって保証契約を解除することができます。
但し実務では、ちゃんと通知している企業はほとんどないと思います。
身元保証委契約書を作って終わりじゃ、本当のリスクマネジメントとは言えません。要注意です。
・損害賠償額
最近の判例によれば、賠償額は請求額の1~3割くらいが多いようです。
通常、使用者には「使用者責任」があるため、保証人が全額賠償するというケースはほとんどないのが実情です。
あとこれは一般的なことですが、保証人にはただの「保証人」と「連帯保証人」があります。
前者は、例え債権者(この場合は企業)から請求されたとしても「先に従業員へ請求してよ」って主張できます。
これを「催告の抗弁権」といいます。
また、従業員の財産について執行するまで賠償を拒むことができます。これを「検索の抗弁権」といいます。
一方、後者は文字通り従業員と連帯して債務を負います。「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」はありません。
身元保証契約は、一般的に「連帯保証人」となっているケースが多いようです。
ということで「身元保証契約」でした。
身元保証人をとるもとらないも企業の自由ですが、リスクマネジメントの観点から言えばとるべきです。
但し前述のとおり、都度保証人には通知することを忘れないように。
ではまた来年ですね。
よいお年を!